アスパラガス採りっきり栽培巡回*2019年11月
- 2019.11.28 Thursday
- 12:00
アスパラガス採りっきり栽培®*11月の農地巡回
多摩市の新しい特産野菜を作ろうと3年前から
市内農家さんたちが積極的に栽培に取り組んでいるアスパラガス。
アスパラガスの美味しさのカギは何と言っても鮮度。
採れたてのアスパラガスのみずみずしさと甘味は格別です。
今年の春、市内直売所や地域イベントで販売された多摩市産アスパラガスは
あっと言う間に完売。テレビや新聞でも取り上げられて大変な人気でした!
▲今年の春、市内の畑で採れたアスパラガス。
市内農家さんたちが取り組んでいるのは「採りっきり栽培®」という栽培方法。
定植からわずか1年で収穫でき、収穫後は株を残さず採りきってしまうので、
同じ畑で別の作物をすぐに栽培することができます。
狭い農地の中で、少量多品目栽培をしている多摩の農家さんにとってピッタリ!
▲今年5月の市内アスパラガス畑。
この「採りっきり栽培」を研究・開発したのが明治大学農学部の元木悟准教授。
定期的に多摩市の農家さんを訪ねて栽培指導をしてくださっています。
11月11日(月)は、市内6軒の農家さんの農地巡回の日。
元木先生と研究室の学生さん、「採りっきり栽培」を元木先生と共同開発した
種苗メーカー パイオニアエコサイエンス(株)の川崎さん、
南多摩農業改良普及センターの小澤さんが指導員として参加され、
市職員とアスパラガスを栽培中の農家さんたちも同行しました。
今年は寒い梅雨が長引き、そのあとは猛暑の到来。
9月・10月は立て続けに大型の台風が来たり、大雨が降ったり、
成長期のアスパラガスには試練の連続。
毎年「天気が異常だよ」と農家さんたちが嘆く夏ですが、
それでも、畑には大人の背丈ほどに成長したアスパラガスの姿がありました。
夏の間にぐっと成長するアスパラガスは、2mくらいになるものもあり、
光合成をたっぷりできるように、細かな擬葉をたくさん伸ばしてフサフサ。
▲擬葉の先端を観察する元木先生と農家さんたち。
「今年はネットを早めに張ってたけど、台風にやられたな」と農家さん。
背が高いだけに、風の影響を受けやすいアスパラガス。
強風が吹くと倒れやすく、茎同士がこすれて傷ついてしまうことも。
台風対策として「風よけビニールなどを施すのも手なんですが…」と川崎さん。
「コストをなるべくかけずに出来るのが採りっきり栽培の良さですからね」と
話していました。
農薬の散布回数を増やしたり、ビニールハウスを建てたりせずに
いつもの畑でできる。それが採りっきり栽培の良いところ。
▲アスパラガスの畑の前で今後の対策を話し合う農家さんと元木先生。
例年、苗の成長に合わせて株が倒れないようにフラワーネットを施すのですが、
これまでの経験から、それぞれにバージョンアップを試みていた農家さんたち。
支柱を頑丈にしたり、ネットの張り方を工夫したりしていました。
▲柚木農園のアスパラガス畑では、頑丈な鉄パイプなどを支柱にし、
また、ネットを無駄なく使えるような工夫をしていました。
▲小形農園のアスパラガス畑の支柱は鉄筋をメインに、
天井部分も竹や紐で繋げてあり、倒れにくく工夫されていました。
「大学の圃場のアスパラガスも、先月の台風で倒されました。
でも学生たちが立て直して、今は青々としているよね」と元木先生。
採りっきり栽培は、通常の栽培に比べて深植えしているので、倒伏に強く、
倒れても起こしてあげればまた復活します☆
アスパラガスの株元がスッキリしている様子を見た学生さんが
「刈り取ったんですか?」と農家さんに尋ねていました。
「台風の風でこすれて傷が付いたのか、病気なのか分からないんだけど、
枯れてしまった茎は、念のため株元から刈り取りました」と農家さん。
そうそう、茎や擬葉が黄色くなったり、傷がついて途中から枯れていたり、
もしかして病気? という症状が出ても、早めにその部分を切って取り除けばOK。
以前の巡回で元木先生が教えてくださったことを実践したのだそうです。
「これから寒くなれば病気になる恐れは減るし、
転流(養分を根に戻して蓄えること)が始まりますから大丈夫」と元木先生。
株の状況を観察しながら農家さんにアドバイスしていました。
今回の巡回では、虫による食害などは見受けられなかったので、
まずは台風でダメージを受けた株のコンディションを整えてあげることが大切です。
まもなく寒い冬が来れば、黄化が始まります。
それまでの間、いかに株を育てて養分を吸収できるかがポイント。
農家さんたちもアスパラガスも、いよいよラストスパートです!
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※「採りっきり栽培」は、パイオニアエコサイエンス株式会社の登録商標です。