小形勝さん紹介

  • 2014.09.04 Thursday
  • 10:36
地域で愛される野菜の無人スタンドで
「百姓」を楽しむ

 
馬引沢の小形勝さんの畑におじゃましたのは、雨が降ってきそうな空模様の木曜日の朝9時半。
毎週、火・木・土曜は、小形さんの野菜を販売する無人スタンドの営業日です。

小形さんは、収穫した野菜をアンテナショップPonteなどに出荷しながら、無人スタンドでの販売にも力を入れています。


 
オープン前。
雨が降りそうというのに、すでにたくさんのお客さんが集まっていました。




「野菜が少なくなっちゃうから、みんなオープンの時間に来るのよ」とお客さん。
中には、バスでいらした方もいらっしゃいました。
盛況ですね〜
おかお(幸せ)
「木曜はまだ少ない方。土曜日は、もっと多いよ」と小形さん。


 
小形さんがトラックから野菜をおろし始めると、お手伝いするお客さんも。
すっかりみなさん、顔馴染みなんですね。
野菜が棚に並ぶと、そのそばからお客さんがどんどん手に取っていきます。
あっという間に野菜は少なくなりました。
 
お目当ての野菜を買ったあとも、小形さんと話したりお客さん同士でおしゃべりしたり。
スタンドを囲んでのサロンのようです。
私が小形さんの野菜についてたずねると、みなさん口々に褒めちぎります。

「小形さんの野菜で作った料理は栄養満点。それで元気にならないはずがないわよね」
「ほうれん草は、絶品よ!」
「毎週木曜は、小形さんの野菜でぬか漬けを作る日って決めてるの」
「このスタンドは、無くなってもらっちゃ困るわ」
小形さんの野菜、地域の奥さま達に惚れられています
kyu

無人スタンドですから、小形さんはしばらくすると畑に戻ります。
「僕が見ていなくても、みんなちゃんと野菜代を払ってくれる。いいお客さんたちなんだよ」
きっと、小形さんとお客さんとの間にしっかり信頼関係があるからですよね。


小形さんが無人スタンドを始めたのは、8年ほど前。
小形さんが収穫した採れたての野菜を、奥さまが袋詰めします。
今年98歳のお母さまも、袋詰めをお手伝いされるそうです。まだまだ現役ですね。
ジャガイモなど土のついた野菜は、水できれいに落として袋詰めします。




「マンションのお客さんも多いでしょ。下水が詰まると悪いから」と奥さま。
なんて素敵な心遣い
kira
夏場は早朝の水も気持ちがいいですが、「冬場は大変だよね」と小形さんも奥さまを気遣います。
 
小形さんの畑は、約7反。いろいろな野菜をスタンドに並べたいと、さまざまな種類の野菜、果物を栽培しています。
例えば、夏の終わりの畑には、きゅうり、オクラ、ふき、ズッキーニ、かぼちゃ、里芋、とうもろこし、山芋、菊芋、ネギ。
ししとうやトマトは、数種類。果樹は、みかん、柿、レモン、ラズベリー、ブラックベリー、キウイ、梅、まだまだあります。


 

   

「果樹は消毒しないから見た目は悪い物もあるけれど、味はいいよ。安全だしね」と小形さん。
冬には収穫した柿で、地域の子供たちと干し柿を作るのだそうです。
 


 ↑干し柿作りに参加した子供たちからのお礼の寄せ書き。

小形さんは、東京工業大学、大学院を卒業後、大手建設機械メーカーに勤務し、長年、材料や材質の研究を行ってきたそうです。
お父さまが亡くなったのをきっかけに、41歳のとき会社を退職。
神奈川県の秦野
から実家の馬引沢に戻ってきました。
退職時は、研究室長という立場だったとか。迷いはなかったのですか?
「迷いはあったけれど、いずれは家に戻るつもりだったから。
それに、室長って立場はやりたいことがあっても、なかなか自分で研究させてもらえなくて(笑)。
『自分で何かをやりたい』という思いもあったんだよね」



 
小形さんの家は400年続く農家。小形さんはその13代目です。
実は、実家に戻ってきた25年ほど前は、ちょうど土地が区画整理で造成された直後。
現在野菜を育てている土地は、宅地として整地されていました。
「その当時は、土はやせていて石も多かった」
区画整理の前後7〜8年間は農業ができなかったそうです。
まずは、どうにかして元気で丈夫な野菜が育つ土に戻したいと、米屋さんに米ぬかをもらって土づくりからスタート。
毎年、毎年、何トンものぬかを土に混ぜ、少しずつ作物を増やしながら今の農地を育ててきたそうです。
 
「農業は、会社の研究より難しかったね」と小形さん。
そうなんですか? 研究も難しそうですが。
「研究は、何度でも試せるけど、農業は1年に1度しか試せない」
だからこそ、農業は先人たちの経験に頼るのも大切と話します。
 
「しかも、天候だったり土だったり水だったりって、変数が多いんだよ」
おお、さすが理系! 「変数」と言う言葉がでました。
「多変量解析って、農業のための手法でもあるんだよ」
タ、タヘンリョウ…?
まあ、私の理解はおいといて、なるほど農業は科学の分野ですね。
 
工学修士でもある小形さん。
阪神淡路大震災が起こった直後、自分の知識が少しでもまちの防災に役に立てばと、過去のデータやデータから読み取れる傾向、意見、提案などを、1冊にまとめました。



 多摩市にも防災計画を提案。
地域の防災計画作りのきっかけにもなったようです。
 
小形さんは、長年自治会運営にも携わり地域づくりにも尽力してきました。
古くからのいい伝統が引き継がれてきた馬引沢。
若い人たちにもその歴史を知ってもらおうと、記念誌を作ったり、自治会館に記念碑を建てたり。




 この碑文は、小形さん作です。
 
今は、地域の仲間と「里山クラブ」を結成し、里山づくりに取り組んでいます。
里山予定地には、古道や関東大震災のがけ崩れ跡があるそうです。
「作業は大変だけど、仲間と一緒にやれるから楽しいよ」
 
もともとは、根っからの怠け者という小形さん。
無人スタンドを休みたいと思うときも、正直あるとか。
「でも、来てくれるお馴染みさんを思い出せば、サボっていられないよね」
お客さんと直接話して、評判を聞くとうれしい。
さらに自分が作ったモノが売れることに、「努力した」という手ごたえを感じるそうです。
 
実は8年前に大病を患ったという小形さん。
回復して野菜や果樹の世話をするうちに、「百姓」がとても愛おしくなったそうです。
「これからの人生は、しっかり百姓をやっていくつもり」

名刺にある「百姓」という肩書に、小形さんの覚悟がうかがえます。



畑の横にちょこんと立つ野菜の「無人スタンド」。
小形さんと一緒に、地域を温かく見守っている相棒のようにも思えてきました。
 
(K)

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