アスパラガス採りっきり栽培巡回*2019年7月
- 2019.07.20 Saturday
- 12:00
アスパラガス採りっきり栽培®*7月の農地巡回
今年の春は、採れたての市内産アスパラガスが軒先販売や直売所でも並び、
すぐに売り切れてしまうほど大人気でした。
やっぱり鮮度が良いと、みずみずしくて甘くて美味しいんですよね〜。
一度この美味しさを味わってしまうと、ファンになってしまいます!
▲春のせいせき桜まつりや多摩センターこどもまつりなど、地域イベントで実施された直売会でも
採れたての市内産アスパラガスがたくさん販売されていました。
今シーズンは、新聞やテレビでも取り上げられ、
多摩市の新しい特産野菜として注目されはじめたアスパラガス。
きっかけは今から3年前の夏、
「新世代アグリチャレンジャー養成講座」で紹介された画期的な栽培方法、
アスパラガスの「採りっきり栽培®」との出会いでした。
通常、定植から収穫まで3年かかるアスパラガス。
その後、同じ株で10年ほど収穫し続けるので、
広い農地やビニールハウスなどの施設で栽培するのが一般的です。
しかし、「採りっきり栽培」なら、
露地栽培で、定植からわずか1年で収穫が可能!
株は次年度には持ち越さず、その名の通り「採りっきり」。
アスパラガスの後の畑で、すぐに別の作物を栽培することができるので、
狭い農地の中、少量多品目栽培をしている農家には大助かりの栽培方法です。
この「採りっきり栽培」を研究・開発したのが明治大学農学部の元木悟准教授。
3年前、市内農家さんたちが「採りっきり栽培」を試験的にスタートした時から
定期的に多摩市を訪れ栽培指導をしてくださっています。
7月1日(月)の巡回では、
元木先生と研究室の学生さん3名、
「採りっきり栽培」を元木先生と共同開発した種苗メーカーの
パイオニアエコサイエンス(株)の川崎さん、
南多摩農業改良普及センターの小澤さんが指導員として参加。
また、「採りっきり栽培」を始めて3年目になる市内農家の
青木さん・小形さん・小暮さんも一緒に、市内6軒の栽培農家の圃場を訪ねました。
1軒目は和田の青木農園。
「今は雑草の勢いがすごくて。昨日も必死で草取りしましたよ」と青木さん。
同行した農家の小形さんと小暮さんもうなずいて、
「あ〜、本当にね。10日も経てば(また雑草が生えて)元通りだよね(笑)」。
夏は雑草との戦い。と、同時に病害虫の発生にも気を配らなければなりません。
「虫はあまりいないようだけど、学生のみんな どうかな?」と元木先生。
先生と学生さんとで、アスパラガスの株をじっくり観察していきます。
株が若い時に虫が付くと成長の妨げになるので、春先からは十分な注意が必要です。
元木先生から、アスパラガスを病害虫から守り、しっかり育てられるように、
アドバイスがありました。
次に訪ねた和田の柚木農園では、
早くも倒伏防止用のネットが高い位置まで設置されていました。
「柚木さん、準備が良いねー」と同行した農家さんたちから感心の眼差し☆
これから夏に向けて背も高く、大きく繁茂するアスパラガス。
ネットがあれば台風などの強風を受けても株が倒れにくくなります。
「ここに太いのが出ていますよ!」と元木先生が教えてくれたのは
株の根元から顔を出していた小さなアスパラガス。
あ・これは食べる用ではないです!
この芽は、上へ上へと伸ばして擬葉※をたくさん広げられるように育てていきます。
※アスパラガスの“擬葉”の詳細は→こちらのブログからどうぞ♪←
「梅雨明けになると一気に伸びますよ。いい調子です!」
元木先生から合格点をもらい、
柚木さんも同行した農家さんたちも一安心の様子でした。
一ノ宮の小暮農園のアスパラガスも、擬葉をフサフサと伸ばして順調な成長ぶり。
前回の5月の巡回時は、夏のような暑さと乾燥が続いて水不足が心配されましたが、
その後は長い梅雨に入り、今度は雨ばかりで日照不足も心配になってきます。
「去年なんて梅雨が無かったのにね。最近は雨が多くて作業しにくいよ」と
農家さんたちも話していました。
元木先生は、
「梅雨時期は病気にかかりやすく、また広がりやすいので注意が必要ですね」と
アスパラガスに発生しがちな茎枯れ病について教えてくれました。
「病気を見つけたら、その下の部分で切ってあげてください」と元木先生。
株が全部ダメになっている訳では無いので、症状が出ている茎を取り除けば
また健康な新しい芽が下から出てくるのだそうです。
早期発見が重要ですね!
隣の太田農園のアスパラガスも好調です。
「とても良いですね!太いのが出ていますよ」と
新芽が出ている株を見つけた元木先生が、太田さんに声をかけていました。
「去年の場所より、こっちの方が調子良いみたい」と太田さん。
1年で株を採り切るので、前年の結果を踏まえて畑の場所を変えられ、
新しくトライできるのも「採りっきり栽培」のメリットのひとつです。
次に向かった小島農園の畑は、連光寺の坂の中腹にあります。
小島さんは「採りっきり栽培」に取り組んで2年目。
今年の春が初収穫となり、その収穫量には驚いたそうです。
「次はもっと太いアスパラガスを揃えられるようになりたい」と話し、
新しい株を定植した場所に案内してくれました。
▲アスパラガスの隣では「ソバージュ栽培®」のミニトマトが
こんもりと葉を茂らせていました。
「場所を去年と変えたからかな、生育がまばらで…」と心配そうな小島さん。
元木先生が畑の形状を見て、アスパラガスの生育との関係を解説してくれました。
「順調に育っている株もあるので、あとは病気にならないように」とアドバイス。
「ミニトマトにとってはすごく良い環境のようですね(笑)」と続けていました。
そうなんです。隣のミニトマトの「ソバージュ栽培」が順調そのもの!
まもなく始まる収穫シーズンが楽しみです。
▲ミニトマトの「ソバージュ栽培」も明治大学とパイオニアエコサイエンス(株)の共同開発。
こちらも明治大学の研究発表会で紹介されて以来、多くの市内農家さんたちが挑戦中です。
最後は、馬引沢の小形農園。
一同、アスパラガスの畑にガッチリ組まれている立派な支柱に興味津々!
「これで去年みたいな大型の台風が来ても倒れないよ!」と小形さん。
「筋交いもしたし、支柱を紐で全部繋いでいるから、ほらほら、丈夫でしょ」と、
鉄筋や竹の棒で作られた支柱を掴んで揺すって見せてくれました。
「これはすごい!」
「上も紐で繋がってる!」元木先生や学生たちも驚いていました。
頑丈な支柱の下で、アスパラガスも順調に育ってきています。
元木先生から「良いですね!新しい芽が出始めているので、一気に伸びますよ」と
これからの成長期に必要な管理方法をアドバイスしてくれました。
圃場から圃場への車での移動の間や巡回終了後も、
アスパラガスの話題で盛り上がっていた青木さん・小形さん・小暮さん。
「他の農家の畑を見るチャンスってなかなか無いからすごく勉強になるよね」
「みんな凄いな。うちの畑はまだまだだなぁ(笑)」
「そうだ!来年の苗をそろそろ注文しようよ!」
今シーズンはもちろん、来年に向けてのモチベーションも高まっていたようでした。
多摩市内でアスパラガスの「採りっきり栽培」の取り組みが始まって3年。
栽培農家さんたちの畑では、支柱を立てたり、防草シートを敷いたりと、
これまでの経験を活かして、先回りした準備が進められていました。
来春の更なる収穫量アップを目指し、農家さんたちの挑戦はまだまだ続きます☆
(a)
※「採りっきり栽培」「ソバージュ栽培」は、パイオニアエコサイエンス株式会社の登録商標です。